時間術の達人が教える極意 2分の電話が生む1時間のロス

仕事が忙しくて新しいことに挑戦できない、子育てに追われて自分の時間がない……「時間」に悩む人への特効薬がある。経営者、コンサルタント、著述家、講演家と一人何役も軽々とこなし、難関の国家資格も取得。そんな時間管理の達人が教える「時間リッチ」になるヒント。今回は「時間には裏のコストもある」という話。日経ビジネス人文庫『やりたいことを全部やる!時間術』(臼井由妃著)から抜粋・再構成してお届けする。

「2分の出費」が「1時間のロス」に
 「2~3分いいですか」と、電話をかけてくる人がいます。

 このとき、「2~3分ならばいいか」と安易に考えてはいけません。
 2~3分の出費だと考えていたことが、実は1~2時間の出費だったということが、よくあるのです。

 たとえばオフィスで企画会議の真っ最中に「2~3分でいいですから」と電話がかかってきたとしましょう。そして2~3分ならと電話に出ます。

 実際に3分以内に電話が終わったとしても、実はそれ以外にも時間は奪われているのです。

 電話に出たために、会議に戻って「どこまで話していたのか?」と、記憶を取り戻すには時間がかかります。
 他のメンバーの会議に対するテンションも、電話の前の状態にするには時間がかかるかもしれません。

 そう考えると、あなたが費やす時間は決して2~3分ではなく、5~10分になる恐れがあるのです。

寝る前にメールをチェックしたばかりに
 根をつめて資料を作成しているとき、企画を考えているとき、頭を使っているとき、仕事に没頭しているときの電話は、もっと被害が甚大です。

 私の場合でいえば、たとえば原稿を執筆しているとき。

 書くことに集中し、自分の表現したい言葉や言いまわしが頭の中でグルグル巡って「あれもいいな、これもいいな」と、執筆の流れが決まり、いざ書くぞとなったときに電話で2~3分作業が中断されると、それまでの流れがスーッと消えてしまうのです。

 たった1回、2~3分の電話のために、1日がダメになってしまいます。

 電話ばかりではありません。

 寝入りばなに数分メールやSNS(交流サイト)をチェックして、その後1時間も2時間も眠れなかったという経験は、あなたにもあるはず。

 たった2~3分の話であっても数時間を奪うことがあるのです。

 時間の達人になるなら、この恐ろしい裏のコストを忘れてはいけません。

「慎重派」という名の時間泥棒
 ビジネスシーンにおける時間泥棒には、もう1つ重大なものがあります。

 それは、必要以上に「準備にかける時間」です。

 どんな仕事にも、タイムリミットというものがありますよね。
 だから、準備不足でも自信がなくても、仕事をスタートさせなければならないことがしばしば起こります。

 しかし、完璧に準備が整わないと仕事が始められない人や、「とりあえず」ということを好まない人も大勢います。
 あらゆる資料を読み、チェックをし、これならば失敗しないと自分を納得させなければ動かない人たちです。

 こういう人たちは自らを「慎重派」だと評価していると思いますが、私はそうは思いません。

 本人のやる気のなさの言い訳であり、単に優柔不断なのだと思います。

 本気で何かを成し遂げたいと願う人ならば、まだ準備が整っていなくとも、とりあえずスタートさせてしまう、「見切り発車」するくらいの気合が必要です。

 挑戦してみると、案外簡単にできた、思った以上に成果が出たということは多々あります。

完璧を目指すのは時間のムダ
 それにもし失敗に終わったとしても、その経験が残り、経験は次の行動へのステップになります。
 失敗の原因を分析し、反省すれば、何が足りなかったから失敗したのかがわかります。

 それに、いくらスタートする前に「あーでもない、こーでもない」と想像しても、失敗するときはするものなのです。

 とりあえず動いてみる。いいと思ったら、素早く動く。

 じっくりと万全を期そうとするよりも、こういった人のほうがはるかに成功に近づくのです。

 そもそも「万全を期す」「完璧に備える」という考え方は、時間を有効活用する上では捨てる必要があります。

 私は、何をやるにしても最初から完璧を目指さないことが、仕事をスムーズに進めるコツだと思っています。

 「やるからには万全の状態で」という人がいます。
 万全を目指して行動したいのはわかりますが、実際は何事につけても、行動するうちに問題点が浮き彫りになるものです。

 だとしたら「万全を目指す」時間そのものが貴重な時間を奪っていく、時間泥棒になります。

走りながら完璧を目指そう
 行動するうちに問題が生じる。それを解決したら、また次の問題がやってくる。
 仕事は、その繰り返しです。

 走る前に完璧を求めるのは不可能であって、走りながら完璧を目指すのです。
 そしてしばらく走ったら、ひとまずよしとする段階(6割ぐらいの実感度)で、いったんその仕事やプランを見直してみるのです。

 たとえば人に頼まれた仕事であれば、そこで一度相手に振るのです。
 そうすれば、最後まで仕上げて相手に渡した仕事が、「解釈が違う」「こんな内容は要求していない」と突き返されることもなくなります。

 やり直しのために余計に時間をとられることもなく、自分にとっても相手にとっても時間の節約になるのです。

「見切り発車」できる行動力
 私もかつては、細かいことを気にして、準備万端整わないと始められない怠け者でした。そして時間がたてばたつほど「失敗したらどうしよう」「いいや、絶対失敗する」「やめたほうがいい」とネガティブに考える小心者でした。

 そんな私が、いかにして見切り発車できる行動力を身につけたのか。
 誰でも実践できるノウハウをお教えしましょう。

 それは、「今、動かないとチャンスを逃すのではないか」「あのとき動かなかったから、自分はみすみすチャンスを逃してしまったのではないか」という視点を持つことです。

 「他の誰かがそのチャンスを持っていってもいいの?」と考えると、人間は不思議なもので「それはダメ! 特に○○さんには持っていかれたくない!」と考えるものです。
 生々しい話ですが、お金にからめて考えると、さらに効果的です。

 こう考えることが、「まだ準備が整っていないからやめておこうかな」という弱気な気持ちを吹き飛ばしてくれるでしょう。

 武器を手に入れてから走るのでは遅い。走りながら武器を拾うのです。

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